TSUTAYAの焼畑農業

近所のTSUTAYAが、月額1080円で旧作借り放題というキャンペーンを始めた。

末期だな、と思う。

これまでも、郵送を利用して1000円で新作旧作4枚レンタルや2000円で8枚プラス9枚目から旧作借り放題などの類似プランがあった。

が、今回は直球で旧作のみ定額で好きなだけ。同時に5枚までなのでドラマなどのシリーズ通覧にも向く。一人暮らしの映画好きは歓喜だろう…か?

旧作はすでにレッドオーシャンだ。
TSUTAYAは店舗によって値段を変えていて、一部の店舗では旧作1枚100円で出している。
そしてもはや有名になったアマゾンプライムビデオは、年間3600円の中にプライム会員が無料で観られる映画を揃えている。

旧作映画とはただ古いだけで、全く価値の薄れない金字塔と言えるものが多数含まれる。

新規参入の映画ファンがそれらを味わい尽くすまでのコストは、過去最安値を塗り替え続けているだろう。

旧来の映画ファンはすでに興味のある箇所は掘り尽くしているだろうから、新しく開拓するか、新作が準新作を経て旧作の枠に落ちてくるのを待つという部分のみに需要がある。これはあまり数を得られないと思う。

TSUTAYAの旧作1080円借り放題は、そんな2016年初頭のタイミングで展開している。

薄めの需要を掘り起こして単価を上げて、一時的に売上を立てる方法。それから撤退したらまるで焼畑農業だ。

物理媒体のレンタルのメリットはローカライズにある。テレビ番組のDVD版などは日本にしか需要がなく、Amazonなどは手薄だ。店舗の目につくところに刺さるものを置ける。

他方、物理的制約によりニッチな作品を配布できない。古いマイナーな作品が発掘されて、世界中でそれを売るのに向いているのはネット配信だ。

物理媒体がネット配信を凌駕できる領域はあまりに小さい。いずれ呑み込まれる運命なのは目に見えている。

このまま終わるのか、別の一手で逃げ延びることができるのか。
双方の盤面は同じではないところが、今後の見どころだと思う。